Jun's Blog

・・・慈しみと寛容・・・


・ヘミングウェイ「誰がために鐘は鳴る」2025.6.14

スペイン内戦を題材にしたこの小説は、主人公のアメリカ人が共和軍の義勇兵として橋を爆破する物語だ。保守派フランコ政権との戦いをめぐり、主人公をはじめとする人々の揺れ動く心の葛藤が描かれている。

物語は3日間の戦いの中で、回顧を交えながら、裏切り、想像に難くないファシスト政権の残虐性、共和軍の保守派に対する虐殺や激しいレイプも語られる。頭を丸刈りにされ、酷い扱いを受けながらも、僅かな希望を抱いて生きる若い女性。主人公は戦場で出会った彼女と寝袋を共にするが、痛みだけが残る。そんな戦場での束の間の恋もまた、この物語の重要な要素だ。

戦争は、現在のウクライナとロシアなどの戦争がまさにそうであるように、人間の残虐性をむき出しにする。おそらくウクライナ兵によるロシア兵へのリンチもあるだろう。日本もかつてそうであった。第二次大戦でアメリカ兵が日本兵の骨を削ってペンダントを作ったことは、人間の尊厳を傷つける酷い行為以外の何物でもない。

人を殺し合う戦争に、兵士は正気でいられるだろうか。戦争にルールはあるのか、殺し合いにルールはあるのか。この世から戦争を無くさない限り、残虐性は無くならない。

発表当時の1940年代、この作品は残虐性よりもアメリカ人の一瞬の恋と戦争を、並行感覚で描いた点が評価された。しかし私は、人間の業、どうしようもない無常観を覚える。