Jun's Blog

・・・慈しみと寛容・・・


サヘル・ローズ著『言葉の花束』(講談社、1430円)

「失敗も弱さも自己肯定して」(西日本新聞記事副題)

イラン人タレントで俳優のサヘル・ローズさんを、以前テレビのバラエティー番組で見かけたことがありました。日本語がとても上手だったので、ハーフなのかなと思っていました。NHKの番組で彼女の特集があり、その驚くべき人生に深く感動しました。コロナ禍新聞で『言葉の花束』の紹介記事を見つけ、彼女の素晴らしい生き方を知ったのでご紹介します。

1985年、イランで生まれたサヘルさんは、戦時下で家族を失い孤児となりました。その後、イラン人の養母と養子縁組し、8歳の時に日本人の養父と共に3人で日本へやってきました。言葉が通じず、生活にも慣れない彼女は荒れ、いじめにも遭い、養父とも上手くいきませんでした。さらに、養母も養父から冷たくされ離婚してしまいます。

2人は住む場所もお金もなく、夜は野宿、昼はスーパーの試食で食べ歩き、飢えをしのいでいたそうです。見かねたスーパーの従業員が、袋いっぱいの食べ物を持たせてくれたことがあったそうです。その後、養母はアパートを借り工場で働き始めましたが、生活は苦しく、サヘルさんは相変わらずいじめに遭い荒れていました。

ある日、どんなに苦しくても決して愚痴を言わない養母が、大声で泣いている後ろ姿を学校から帰って初めて目にしたサヘルさんは、大きなショックを受けました。そして、母もつらい気持ちを隠していたのだと知り、アルバイトを始めたのです。その後、生活費や大学に行く資金を稼ぐためエキストラのアルバイトを始めました。これが彼女の俳優業の始まりで、現在に至っています。

現在、俳優業の傍ら、イランへの支援や日本との懸け橋となる活動も行っています。(イランの大学では日本語の本が少ないため、仲間と資金や本をボランティアで集めて日本語学科に送ったり、現地の孤児の支援活動を行ったりしています。また、アメリカ人権活動家賞を受賞しています。)

『言葉の花束』では、日本での経験が自分を強くしてくれたことなどが語られていると記事にありました。苦しかったことを言葉を通じて前向きにとらえることが、日本でも通じるとサヘルさんは語っています。