・・・慈しみと寛容・・・
ノーベル賞作家パール・バックの描く中国人は、父親が伝道師であったことの影響もあり、また自身も伝道師になりましたが、後に破門されます。古い中国の伝統に根差した、キリスト教的な、男女が結婚前に触れ合うことが許されない、自分を律する姿でした。時代は、日本を含めた西欧列強の侵略のもと、国の変革が求められた時期でもありました。
勤勉な土地を愛するワン・ルン(第1部「大地」の主人公)、放蕩息子のその長男、ずる賢い商売人の次男、女性に興味を見せない軍人の三男(第2部「息子たち」の主人公兄弟)、軍人の第二夫人の、大地に根差した伝統と西欧化に揺れる息子ワン・ユワン(第3部「分裂した家」の主人公)と物語が流れていきます。
軍人の第一夫人は、医者の娘として教養も高く育ち、30歳で嫁いできました。その娘(ユワンの妹)は、甘やかされ、性格が派手で、最後は妊娠して浮気の相手と結婚します。揺れ動く第3部のユワンは、派手な実母ではなく、父親と別居している上品な第一夫人に、留学先からの失意で、頼ることになります。
留学は、親しくしていた、でも触れ合うことはなかった革命戦士で、彼に心を寄せていた女史に、警察の取り調べで裏切られ、国から逃げたものでした。彼は、アメリカで近代化の素晴らしさに感動しましたが、クリスチャンである恩師で教授の、学ぶことの好きな議論好きでもある、その娘に突然口にキスをされ戸惑いました。
これまで貧民街もなく近代化されたアメリカと思っていましたが、結局母国と同じく貧しい人もおり、やたらと男女が触れ合うアメリカに嫌気がさして去ることになりました。
第一夫人には、捨て子を養子にした娘メイリンがいて、真面目に育ち、医者になることを夢に、夫人の実の娘アイレンの世話をしながら学問に打ち込みました。べたべたしない、知的な彼女にユアンは惹かれていきますが、いつもユアンと議論をしている彼女は、アメリカ帰りの彼にはそぶりを見せませんでした。ユアンは思い切って結婚を申し込むのですが、医者の道があると断られました。
彼は途方に暮れ、半ば自棄になり、誘われたダンスパーティーで踊ることになります。これを知った彼女は、軽蔑とも焼きもちともつかない態度を示し、彼とは口もきかなくなりました。
ユアンは学問より軍人を勧めた父親とあまりそりが合いませんでしたが、留学費用を工面してくれました。病に臥せった父親の介護に彼女と向かい、父親の最後の言葉「お前はよくやった」に涙し、彼女と目を合わせ、うなずき合い、心が通じ、その余韻を残しながら物語は終わりました。
おわり