哲学の歴史

世界十五大哲学(哲学思想史)の1部要約 その13Ⅱ哲学思想のあゆみ

§7 帝国主義と社会主義革命の時代の哲学思想


哲学の一般的特色

19世紀末から20世紀初頭、資本主義国は帝国主義段階へ移行。反動化したブルジョア哲学は、認識論主義と生の哲学の分裂を継続。


現象学派

新カント派に加え、現象学派が誕生。代表はフッセル。主観的な「体験の流れ」を重視し、真理の場をそこに求める主観的観念論を展開。


ベルグソン

フランスのベルグソンは、科学批判から独自の「生の哲学」を展開。意識や直観を重視し、純粋持続である時間を直観することに真の哲学的認識が成立すると説く。


ドイツの実存主義

ドイツではハイデッガーとヤスパースが実存主義を展開。ハイデッガーは、人間存在の有限性に着目し、不安からの脱出を死の自覚に求める。ヤスパースは、人間存在の自由を根源とし、自己を「在らしめる」決断の必要性を説く。ドイツの実存哲学は、第一次大戦後のインテリゲンツィアの気分を理論的に表現したものであった。


フランスの実存主義

第二次大戦後、サルトルがフランスで実存主義を開花。ニヒリズムを伴う人間存在の無意味さを受け継ぎつつ、自由の連帯性を主張。平和運動や民族独立運動への参加に繋がった。


アメリカの哲学思想

独立戦争前夜から直後にかけて、フランクリン、ジェファソン、ペインらが啓蒙思想を牽引。19世紀前半には超越主義が成立。後半には、ロイスの絶対的観念論とパース、ジェームズのプラグマティズムが成立。プラグマティズムは、観念の有効性を真理とみなし、人間認識を環境への適応と捉える。帝国主義時代には、デューイがプラグマティズムを継承。


新実在論

20世紀初頭、イギリスでホワイトヘッドとラッセルが新実在論を提唱。客観主義を唱え、哲学と自然科学の協同を説くが、見解は動揺的。アメリカでは、新実在論の影響で批判的実在論が生まれた。


論理実証主義

英米で論理実証主義が流行。哲学の任務を言語分析とし、分析哲学を自称。記号論理学重視派と日常言語学派が存在。プラグマティズム、新実在論、論理実証主義は相互に影響しあいながら発展。


ブルジョア哲学の一般的特色

帝国主義時代のブルジョア哲学は多様な見解を持つが、マルクス主義哲学への反対という共通点を持つ。マルクス主義哲学に対抗するために様々なヴァリエーションを生み出したと見ることができる。


ロシアにおけるマルクス主義哲学

19世紀末、ブレハーノフによってマルクス主義がロシアに導入され、レーニンによって労働運動と結びつけられました。1905年の革命失敗後、マルクス主義から唯物論哲学を取り除く動きに対し、レーニンは「唯物論と経験批判論」を著し、認識論の面からマルクス主義哲学を発展させました。

レーニンは、マッハ主義が観念論であることを論証し、唯物論と観念論の対立を超える第三の立場は存在しないことを明らかにしました。また、哲学は常に党派的であることを示しました。その後、レーニンはヘーゲルの「論理学」などを研究し、「哲学ノート」を著しました。

十月革命後、ソ連邦はマルクス主義哲学の中心地となり、実践的課題と結びついて、大規模な討論や論争を通じてマルクス主義哲学が発展しました。重要な論争としては、機械論批判、デボーリン批判、アレクサンドロフ批判、形式論理学評価論争などがあります。

スターリンの著作は、明快簡潔な表現で啓蒙宣伝的な役割を果たしましたが、「個人崇拝」の下で教条化され、哲学の発展に悪影響を与えました。「世界哲学史」などの共同著作や、ルヒンシュテインの「存在と意識」などが注目すべき業績として挙げられます。


中国におけるマルクス主義哲学

中国では、毛沢東が「実践論」と「矛盾論」を著し、マルクス主義哲学に新たなページを加えました。


日本の哲学界

帝国主義時代に入ってから、「西田哲学」が影響力を持ちました。西田幾多郎は、東洋の宗教的神秘主義と西欧の哲学思想を結びつけ、神秘化された弁証法を展開しました。

西田の門下から出た三木清は、マルクス主義哲学に関心を寄せましたが、自己流に解釈しました。その後、戸坂潤が弁証法的唯物論の理解者、研究者、普及者となり、古在由重、水田広志らが昭和初年のマルクス主義哲学の代表者となりました。

戦後、日本の哲学界は、ドイツ観念論の系統、プラグマティズム・論理実証主義、唯物論哲学の3つの流派に分かれました。唯物論哲学は、戸坂らの伝統を受け継ぎ、労働運動の発展を背景に強固な流派を形成しています。


結語

以上でわれわれは、原始社会から今日の日本まで、哲学思想のあゆみを、息をつく間もなくかけ足でおいかけてきた。いそがしい旅行ではあったが、その間に、ここはぜひゆっくり見たいという15の名所に、印をつけてきた。名所の数はもっと多いが、さしあたり15に限って選んでみたのである。

第二編での旅行は、もう一度出発点にかえって、今度は印をつけた名所だけ、ゆっくり見ることにしよう。第一編での旅行は、いそがしい旅行だったけれども、もう一度はじめから名所見物をするにあたって、いきなり名所だけ見るのとはちがった味わいをそえ、必ず役にたってくれることと思うのである。


参考文献

哲学史に関する書物の数は、日本人の書いたものも、外国語のものの翻訳も、すこぶる多い。だが、いたずらにたくさん列挙するのが能ではあるまい。かえって選択に迷わせるだけであろうから。

まず、この編で試みたように、哲学思想史を流れとして、いわば大局的にその動きをとらえようとするもので、この第一編よりも詳しいものとして―――中村雄二郎、生松敬三、田島節夫、古田光著「思想史」(昭和36 東大出版会) つぎに、流れというよりも、個々の哲学者や学派に重点のあるものとして、つぎの二冊。


玉井茂著「哲学史」(昭32 青木書店)

シュヴェーグラー著「西洋哲学史」上、下(昭和14 谷川、松村訳、岩波文庫)

前者の著者は唯物論者であり、シュヴェーグラーはヘーゲル学派中間派に属した人。後者は、古い本であるが、今よんでも十分にためになる。

文献がたくさんあがっていて、自分で研究しようとする人のために役立つと思われるのは――

速水敬二編「哲学研究提要:哲学史編」(昭26 第一出版株式会社)

大部であることことにへきえきしない人にすすめたいのは、前にも述べたことのある――-

ソビエト科学アカデミー版「世界哲学史」(昭和33~36 東京図書株式会社:旧名商工出版社。この本は、出隆・川内唯彦・寺沢恒信の監訳のもとに、8名の訳者が協力して翻訳にあたった)

おわり