サルトルについて
ジャン=ポール・サルトル(1905-1980)は、20世紀を代表するフランスの哲学者であり、小説家、劇作家でもあります。
彼の思想を一言で表すなら、「人間はどこまでも自由であり、それゆえに自らの生き方に全責任を負わなければならない」というものです。
サルトルの主要な考え方を、わかりやすく3つのポイントで解説します。
1. 実存は本質に先立つ
これがサルトルの思想(実存主義)の核心です。
- 道具(本質が先): 例えばハサミは、「紙を切る」という目的(本質)があってから作られます。
- 人間(実存が先): 人間にはあらかじめ決められた「目的」や「設計図」はありません。まずこの世にポツンと投げ出され(実存)、その後に自分で自分をどういう人間にするかを作り上げていくのです。
「人間は自らをつくるもの以外、何ものでもない」
2. 人間は自由の刑に処せられている
サルトルにとって、自由はキラキラした希望だけではありません。それは重荷でもあります。
神や運命といった「言い訳」が通用しない世界では、自分の選択の結果はすべて自分に返ってきます。どこへ行くか、何を信じるか、すべて自分で決めなければならない。この逃れられない自由の状態を、彼はあえて「自由という刑罰」と呼びました。
3. アンガージュマン(社会参加)
サルトルは、書斎に閉じこもる哲学者ではありませんでした。
人間は世界の一部である以上、自分の行動が世界に影響を与えます。したがって、社会の不正や政治的問題に対して積極的に関わっていく(アンガージュマン)ことが、自由な存在としての義務であると説きました。
代表作
- 『存在と無』:彼の哲学の集大成
- 『嘔吐』:実存の不安を文学的に描いた小説
- 『実存主義はヒューマニズムである』:彼の思想を分かりやすく解説した講演録
ちなみに、1964年にノーベル文学賞に選ばれましたが、「権威に縛られたくない」という理由で辞退したことでも有名です。まさに「自由」を貫いたエピソードです。
サルトルの「自由」は、現代の私たちにとっては少し厳しくも感じられますが、逆に言えば「過去や環境に縛られず、今からでも自分を変えられる」という力強いメッセージでもあります。