(1)哲学の歴史

●2022.5.31

(3)最大の教父アウグスティノス

①国家における迫害の対象であったキリスト教は、変質しテオドシウス皇帝によって392年に国教となった。教団組織内には官僚的位階制かつての共和制ローマ帝国から東方的専制帝国へ変質を遂げたローマ帝国にふさわしい国教となった。このような教義を確立させたのは、最終で最大の教父アウグスティノス(354-430)であった。

②彼は、プラントン派の哲学でキリスト教を説明しようとした。神の絶対性を人間生活の反省から説明する為、人間への内面に向かい、そこに心理が宿る、すなわち、内的経験の自己実現性から出発した。だが、外的なものを全て疑っても、疑っている自己の内的経験は疑えないと言う真理を求める自我、すなわち、「神への渇き」を持つ自我を持ち、後のデカルトとは違っていた。

③人間の心の内には真理(イデア)があるが、その原因は神であり、神の中にあるイデアが新プラトン主義的な「流出」によって、人間精神に与えられると言っている。最高の真理の啓示が、心の所有となるには、信仰のみ可能となる「信ぜよ、さらば理解されよう」と説いた。

④アウグスティノスの思想でもう一つ重要なのは、著者「神の国」にある歴史哲学である。神の国(神への愛を原理とする)と他の国(自己愛を原理とする)との闘争で、世界歴史が動き、目的論的過程を経て、最後の審判で神の国が勝利すると捉えられている。だが、ローマ国教に変質したキリスト教は、神の国を理想とする限り、現実の国家(不平等、私有財産)も許される事になり、原始キリスト教の持つ下層民衆の代弁者の役割はなくなり、現実と妥協する保守的な社会観が現れる事になる。

つづく